kenny0808’s diary

小学校教員の日記。作文・読書教育。つくり手になる学びを探究する。

作家の時間の実践原稿①〜頭と心の法則〜

「頭と心の法則」とはインザミドルの第4章書き手を育てる・ミニ レッスンで紹介されている書き手の技だ。前回の作家の時間のミニレッスンで、さっそく紹介してみた。と、ぼくの話の前に、まずは「頭と心の法則」の説明から。 以下引用。

 

「それで?の法則」とペアになるのが「頭と心の法則です。書き手 が、自分の頭と心―そしてフィクションを書いている時には主要な登場人物の頭と心 を「採掘」し、そこでも見つけたものを描写し始めることで、もっと大きな鉱脈、つ まりテーマを割り当てるための準備を整えるのだ、という法則です。

「頭と心の法則」が生まれるまでのプロセスを、ナンシーはこのよ うに記しています。

「どうしてこんなに退屈な話に仕上がってしまうのだろう。その理 由がはっきりしな
いまま、私は「もっと描写を充実させ、新たな情報を織り込みなさ い」と、今思えば
的外れの助言をしていました。その結果、生徒たちの詩や回想録は どうなったのでしょう。夜明けに上った「すごく高い」山で見た「まずしいピンク色の 」日の出。子ども時代の「すごく、すごく仲良し」親友との別れ。「ピンク色の肌の 」新しい家族の誕生。「1階建ての校舎から2階建ての校舎への」転校・・・。いっ そう冗長で退屈な作品ばかりになったのです。

会話文だらけの物語や「したこと」だけに終始する作品を目にするたびにぼくのカンファランスも同じ ようなアドバイスがくりかえしていた。
「(子どもたちの作品のよいところを伝えた後に・・・)もっとく わしく書いたほうが伝わるよ。そのときの場面の状況や主人公の動きや表情が読者に 伝わると、ドキドキやワクワクが伝わるんじゃないかな。あなたならどこに書き加え られそう?」といった具合に。カンファランスをくりかすと、子どもたちの作品は少しずつ変わっていた。主人公の動きや気持ち、主人公の紹介や場の設定などの情報ももり こめるようになって、作品がよりよくなっていく実感を子どもたちも持てるよ うになった。ナンシーほど、子どもたちの作品を悲観してはいなかったけど・・ ・、似たカンファランスが各所で続いていたこともあり、子どもたちにとって必要性 の高いものを「作家の技」として伝えたくなった。カンファランスのたびに振り返る のも大事だけど、「技」が使えているかどうかの視点で自分の文章を読み返せるよう になってほしかったから。そこで、何かいいネーミングはないかなーとライティング ワークショップの本を読み返してときに目にとまったのが、ナンシーの「頭と心の法 則」だった。

 ミニレッスンでは、僕の中学時代の野球部の話をえがいた散文詩「最後の夏」を 題材に「頭と心の法則」について教えることにした。

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「今から先生の作品を読みま す。この詩の中に、先生が自分の頭で考えたことや感じたことがわかるように、それが 君たちに伝わるようにと、下書き段階から時間をかけて言葉を書き足しています。見 つけたら線を引いてみてください」

「あ、無我夢中って言葉」

「心臓のこどうが早くなる」

「汗がとまらないって緊張してるってこだよね」

頭と心の法則はネーミングもいい。

「これは頭で考えたことだよねー。これは心だ。」と言った感じで、次々と書き手の工夫を見つけていく。

「そうそう。自分や主人公が頭で考えたこと、心で感じたことがなければ、読者を話のなかに引き込むことはできないんだよね。この技を「頭と心の法則」といいます。君たちの作品にもこの法則が使えられるところはあるかな?一緒に考えてみよう」

 カンファランスの時間は、頭と心の法則を使うといいなと思える場所に☆印をつけた。これはナンシーの追試。☆箇所に情報をつけたしていく。子どもたちも「☆のところを見て」と、修正のしやすさにつながっているようだった。

 共有の時間。作品はAに紹介してもらうことにした。Aの作品は 、学級で行っている漢字スキルテストで競争しているライバルBとの出来事が書かれて いた。自分の経験が題材になっていたこと、スイミーを教材にして伝えた比喩表現が 使われていたんだよね。共有タイムでどの作品を紹介するのかは結構大事な部分だと 思っていて(本にもそう書かれていたような・・・)、ともかく、この時間をどう扱うかで、教師が作家で大切にしてほしいことの伝わり方も変わっていく。身近な経験が題材にもなっていて、一粒の小石の法則にも触れることができるとも思った。子どもたちの作品は、よりよい作家となっていくヒントが満載だ。本当に面白い。